日本の伝統文化の意義と魅力

調査員としての倫理観を鍛えるために、伝統文化に触れて、幅広い知見を身に着けましょう。

日本には多くの伝統文化があります。

西洋化が進んだ現代では、伝統文化に対する興味が薄れています。

しかし、日本の伝統文化には人の心を豊かにする教えが多く盛り込まれています。

今回は日本の伝統文化の基本を見ていきたいと思います。

茶道とは

茶道とは「茶を振る舞う一連の行為」の事を言います。

茶道には、客人への作法だけでなく、庭や茶室、工芸品(茶道具など)、様々な日本の芸術的要素が備わっています。

日本の精神である「おもてなし」「わびさび」を追求することでもあります。

茶道の歴史

鎌倉時代前後、栄西という僧が、中国の宋から茶を日本に持ち帰りました。

中国の禅宗の一派が道教の教儀を取り入れてお茶の儀式をおこない、その文化を日本が輸入した形のため、禅と茶道には密接な関係があります。

室町時代のころになると、僧侶の村田珠光が、本格的に禅の精神性を取り入れて【侘茶】を始め、茶室、基準や作法などを定めました。

これを弟子の武野紹鴎、その弟子の千利休が日本文化としての発展させて【茶道】となりました。

茶道は「至上の美を追求する宗教」とも呼ばれています。

茶道の精神【利休七則】

1. 茶は服のよきように点て

【服のよき】には「一椀を通じての心の交流や気配りなどすべてに関わりがある」という意味があります。

相手が飲みやすいように、適度な湯加減と抹茶の量にする事が大切です。

2. 炭は湯の沸くように置き
しっかりと湯が沸くポイントに炭を置くこと。

お茶をたてる際に適した温度が「摂氏75~80度」です。

3. 花は野にあるように
季節ごとの【茶花】を自然のままに生命力、美しさを再現する。

※茶の湯では床の間に茶花を飾ることになっている。

4. 夏は涼しく冬暖かに
季節ごとの心地よさをつくる。

利休は「茶の湯でも季節感を最大限に出し味わう事が大切である」と説いています。

5. 刻限は早めに
何事もゆとりを持ってことにあたる。

相手を待たせないなど、礼節につながるとも考えられます。

6. 降らずとも傘の用意
どんなことが起きても対処できるよう想定して備える。

相手への「思いやり」が表されています。

7. 相客に心せよ

目の前の人だけでなく、その場に居合わせたすべての人に気を配りなさい。

茶室にはおいては全ての人が平等であることが理想とされています。

茶道の理念

・和敬清寂

全てのものに対し思いやり、尊敬の念をもって接することで、そのためには、足りないことにも満足する心、澄み切った心をもたなくてはならないことを指します。

・一期一会

「この場は二度とない」と考えることで、一つ一つの振舞いに心をこめることです。

利休最後の茶

「よくぞ我が前に現れた。永遠なるこの宝剣よ。仏陀を貫き、達磨までを貫いてきた剣よ。今度は同じように私を貫き、お前の道を貫くがいい」

これは利休最後の言葉として知られますが、岡倉天心の「茶の本」でも最後に使われた言葉です。

岡倉天心は「茶」と日本人としての誇り・文化を海外に示した人物であり、西欧文化に真っ向から立ち向かった偉大な人物でもあります。

書道とは

書道とは「文字の美しさを持って個性を表現する」事を言います。

書道と習字を混ぜている人が多いですが、習字は文字を綺麗に書く、文字を学ぶことを目的としています。

しかし、書道にも「能筆」と呼ばれる技術があります。

※「能筆」とは集中力を養い美しい字を書く技術です。

書道の歴史

始まりは弥生時代のころを中国から伝わったとされています。

これが仏教の「写経」を通して広く普及する事となります。

※「写経」とは「般若心経」などの経典の書き写すこと(心を落ち着かせ集中させる効果があるとされている)。

平安時代のころになると、「国風文化」と呼ばれるスタイルが流行り、日本独自の文化が重視されるようになりました。

こうした時代の流れと共に日本文化としての「書道」が芸術と評価されるまでになりました。

書道の効果

1.集中力が高まる

現代の日本人はスマートフォンの普及で、常に集中力が奪われています。

それに伴い、一つの事に集中する能力が確実に低下しています。

書道に向き合い、私達が本来持っている「集中力」を取り戻しましょう。

2.心が落ち着く

書道は「自分との向き合い」としてとらえる方も多く、セラピー効果が期待できます。

墨の香りもストレスを軽減させるとされています。

「書道」とはこれに尽きるのかもしれません。

数えればキリがありませんが、目標遂行能力の向上や右脳を鍛えられるなど、様々な観点から注目されています。

禅とは

「禅」と聞くと日本では「座禅」が頭に浮かぶ方がほとんどではないでしょうか。

「禅」とは「心の在り方」であり、一つの事に執着せず、無駄を省き、自分を見つめなおす。

まさに自由自在であり、無我の境地でもあります。

日本の精神である「わびさび」の精神に通ずるものを感じます。

禅の歴史

禅の始祖は「達磨」とされています。

※達磨は釈迦の28代目の弟子で南インドから中国へ渡り、日本に伝わったのは鎌倉時代のころです。

栄西は「臨済宗」、道元は「曹洞宗」、二人によって禅は広く知られるようになります。

さらに江戸時代のころ、中国臨済宗の系譜である隠元が黄檗宗を日本で広めていきます。

これが日本の三大禅宗です。

禅の精神

禅宗では、人の命は地水火風空の五大(五元素)が、仮に結合してこの身体を構成していると考え、死ぬとは元の五元素に回帰することに過ぎないとしています。

つまり死後の世界は無い上に、神に裁かれる事も無いから、生きている今にこそ、安心して本来の仏性を心量一杯に燃焼させようと言うことです。

さらに禅において言葉は思考の妨げと考えられており、何よりも物事の本質と向き合う(つながる)ことに重きを置いています。

いくつか教えを紹介しておきます。

1. 無駄を省く

スティーブ・ジョブズが最も影響を受けた教えではないでしょうか。

iPhoneの洗練されたデザインからは無駄を感じません。

2. 直指人心(じきしにんしん)

坐禅をして、自分の心を見つめる修行のこと。

現代社会で大切なことです。。。

3. 心身脱落(しんじんだつらく)

体も精神も束縛から解き放つ。

「ひたすら座り続けること」座禅のもとになった言葉です。

4. 日々是好日(にちにちこれこうにち)

「過ぎたことを忘れ、一瞬一瞬を大切にして精一杯生き、よい一日にしなさい」

意識が色んな方向に行きがちになる。

この教えも現代ではさらに大切にしないといけません。

5. 人と比べない

SNSで華やかな生活を送る人を見ると嫉妬心や劣等感が生まれてしまいます。

自分の人生を歩まなければいけません。

6. 承認欲求を捨てる

承認欲求は誰もが持っています。

しかし承認欲求を満たすのは一生かけても無理でしょう。

自分の価値は自分で決めましょう。

華道とは

華道とは、四季の草木や花卉(花の咲く草)や材料(現代では野菜や果物も使われる)を美しく構成し鑑賞する芸道です。

華道は茶道から独立した流れをもっています。

華道と欧米のフラワーデザインの違い

華道は「形式派」と「自然風派」の流派に分かれ全盛期には百を超える流派があったそうです。

流派によりますが正面から見ると定めている流派が多く存在します。

フラワーデザインは三次元的に評価する事が多いと言います。

しかし日本にも三次元的に評価する流派もあることから、明確な違いはありません。

日本は国民性ゆえに立ち振る舞いや所作を大切にします。

フラワーデザインは見た目の華やかさに重きを置いているように感じます。

華道は芸術的で、フラワーデザインは華やかさでしょうか。

華道の歴史

室町時代のころから華道の習慣はあったとされています。

供花(仏様に手向ける花)が色々な影響を受けて「たて花」となり千利休が「茶花」として昇華させ、現代の「生け花」となりました。

華道も仏教に精通するところがあるようです。

華道の魅力

1.生き物の尊さを学ぶ

花と接することで慈しみの心をもつ。

2. わびさびの心

華道を通して日本の「わびさび」を感じる。

3. 礼節が身につく

身だしなみはもちろん、礼儀作法がみにつきます。

4. 感性を磨く

芸術として大会が開かれるほどですから、自分の感性が高まることは間違いありません。

能とは歴史などを題材とした歌舞劇の事を言い、日本では古来から伝統文化として、庶民から愛されてきました。

また、お釈迦様が説法を行う時の催しが起源であるとも言われています。

能の始まり

能は奈良時代に「散楽」という芸能が中国から渡来した事が始まりとされています。

奈良時代は多種多様な芸が多く伝わった時代です。

能の精神

「能」の創始者である世阿弥の言葉に「能に花を知ること、無上第一なり」というものがあります。

これは「能の中に花があることを知れ」という意味です。

日本には「花を持たせる」や「花を咲かせる」といった言葉があります。

世阿弥は、他人への思いやりを大切にする事を伝えたかったのではないでしょうか。

まさに日本人が大切に育て、伝えていきたい心です。

まとめ

いかがでしたか?

まだまだ日本哲学には素晴らしい考え方があります。

今回は「触り」ということで抑えておきたいと思います。

このような時代だからこそ日本哲学を学ばなければならないと感じています。

是非、共に学んで行きましょう。

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