知覚心理学の基礎

今回は、知覚心理学を学んで調査スキルを向上させましょう。

心理学の分野でも認知心理学・発達心理学・学習心理学・社会心理学などの基礎心理学から、今回説明する応用心理学の一つである知覚心理学など多岐にわたります。

心理学は科学の分野に入れるべきではないと言った考えの人もいますが、心理学は自分も含めた人間を理解する上で、非常に役立つ学問です。

また心理学は、記憶とも親密な関係があり、仕事やプライベートでも役立つことは間違いありません。

今回は入門として、知覚心理学について見ていきたいと思います。

知覚心理学とは

知覚心理学は聴覚・視覚・味覚・嗅覚・触覚などの、私たちが日常に感じる感覚から、それに対応する行動を研究する学問です。

なぜその行動を取るのか、脳の中ではどのように情報の処理が行われているのかを推察する事も知覚心理学の役割です。

感覚の中でも視覚は特に研究が盛んにおこなわれています。

それは視覚領域が単体での研究が可能で、より私たちの生活に必要とされている事が影響しています。

ベクションとクオリア

ベクションは視覚からの影響を受け、実際の自分の行動とは違う移動感覚を生みだすような錯覚を起こす現象の事を言います。

またジェットコースターのように、景色が上に流れていくように視覚が捉えると、気分が高揚したりすることもベクションの効果です。

「上」という概念は人間の心理をポジティブにしますが、逆に「下」という概念はネガティブな印象を与えてしまいます。

例えば講演会や選挙演説などで指を下に指しながら話す人は、相手に自分が劣っていると自然に感じさせようとしているのかもしれません。

さらに私達は普段何気なく知覚しているだけでなく、状況に合わせて音や臭いなどの情報に優先順位をつけて情報を受け入れています。

このように情報の重要性に応じて、脳内で情報を処理する優先度を決める事を、心理学では「重み付けをさげる」「重み付けをあげる」と表現します。

クオリアは「個人的な感覚や質感」の事を指します。

私たちは、1人ひとり感じ方が違います。

例えば自分が臭いと思っていても、他の人からすれば何も気にならないなどが良い例でしょう。

このような1人ひとり違う感覚を追求していく事も知覚心理学の大きな役割です。

注意資源

有名人の中には選択するエネルギーを消費しないように服を選ばない、決まったものしか食べないといった人がいます。

これは心理学的には懸命な判断で、人間は物事を判断する時には注意を向ける必要があります。

しかしこの注意を向けるエネルギーには限りがあり、これを注意資源と言います。

この注意資源には個人差があり、もって生まれた素質が大きいため、私たちのような一般人は不要な物事に注意をむける余裕はないのです。

また、この注意資源を有効に利用するために、物事を「習慣化」することで、注意資源の消費を軽減させることが可能です。

記憶力を高める方法

記憶力は私生活においても仕事においても重要なスキルです。

しかし覚えていたことが忘れてしまうといった経験は多くの人がしています。

様々な記憶についての研究が行われていますが、結局のところは自分に合った方法を見つけることが大切だと思います。

記憶力を高めることで、人生を生き抜くためのスキルを上達させましょう。

心理学においては記憶は3種類に分けられています。

  • 感覚記憶
  • 短期記憶
  • 長期記憶

記憶はまず感覚記憶から始まります。

五感から与えられた情報の中から、注意の必要な情報が短期記憶に移行します。

この短期記憶は数分から数時間の間、情報を保持しますが、さらに重要な情報は短期記憶から長期記憶へ移行することになります。

五感の中でも最も一般的に使うのが視覚だと思います。

「目が良い人は覚えが早い」とよく言われますが、これはあながち間違っていないようです。

目で見たものは他の四つの感覚よりも、頭の中で再現することが容易です。

頭の中で再現するときのポイント

  • 身近なもの・場所・ストーリーと関連付ける
  • 情報を視覚的にイメージする
  • 感情を情報に組み込む

この再現してイメージする行為は、記憶を掘り起こす際に有効な手段とされています。

感覚記憶・短期記憶・長期記憶の3種類が重要になりますが、これらとは別分類されている作業記憶というものがあります。

作業記憶はすぐに処理する情報を一時的に保持するもので、別の作業に移ればその情報はすべて消去される記憶のことを言います。 

この作業記憶は注意資源と密接に関係しています。

注意するということは、必要な情報を選別することとも言えます、

必要な情報を適切に選別することで、記憶したい情報を絞ることができるため、注意資源が不足することを防ぐことができ、必要な情報を記憶することができるのです。

一般の人の作業記憶の容量は、5~9個の情報を保持できるサイズと言われています。

私たちのような普通の人間はこの少ない容量を上手に使いこなす事が大切です。

記憶の特性を生かした勉強方法

「学習する時に様々な種類の本を同時に読んだ方が効率が上がる」とよく言われています。

あれは記憶する際に使うエネルギーを節約するためです。

勉強では一つの課題を行う事を忘れず、休憩を挟んだ後は、別の分野の勉強を行うようにして、似通った分野を記憶することは避けるべきでしょう。(記憶が衝突してしまうため)

次にツァイガルニック効果というものがあります。

人間は完了してしまったモノよりも、中途半端になっているモノを覚えています。

これを利用することで、一度休憩してしまった後にやる気がなくなってしまうパターンをつぶすことができます。

つまり休憩する前には中途半端に終わらしてから休憩に向かうことで、休憩後も集中して学習を行うことができます。

記憶の忘却

せっかく覚えた記憶は1時間後には50%以上は忘れています。

意識して覚えた情報は別ですが、さらに一週間後になると70%以上の記憶は失われています。

これを避けるために私たちは何度も繰り返し勉強する事で記憶を定着させようとするのです。

ここではその繰り返し勉強する適切なタイミングを紹介します。

  • 1回目 記憶してから15~20分後
  • 2回目 6~8時間後
  • 3回目 24時間後

・時間が取れる場合

  • 1回目  最初に記録した日のうち
  • 2回目 4日後
  • 3回目 7日後 

復習する回数は最低でも3回と言われています。

しかし記憶を呼び起こす時には注意が必要です。

記憶を思い出す時に一部分だけ思い出してしまうと、その周りの情報の記憶が薄れてしまうのです。

復習するときは全体を復習することが必要です。 

まとめ

感じ方についての面白い研究があります。

私たちは一緒に仕事をしたことがなくても「あの人は優秀だ」といった他人の評価をよく話したりします。

確かに実績はもちろんですが、その人の見た目や態度によって判断することも多々あります。

しかし基本的にその意見はまとまっているように感じた事はないでしょうか?

これは私たちの視覚による認識が当たっている事が多いのです。

ある実験で「~の平均顔」を作成しました。

すると経営者は経営者の顔、銀行マンは銀行マン、の顔のようにイメージ通りの顔がデータから導き出されました。

このような研究結果を踏まえると、私たちも日頃から見た目には少し注意を払ったほうがいいのかもしれません。

参考文献

「脳は、なぜあなたをだますのか」 著 妹尾武治

「KGBスパイ式記憶術」 著 デニス・ブーキン、カーミル・グーリーイェブ 訳 岡本麻左子

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