ハラスメントの種類
ハラスメントの対策が、令和元年6月1日に事業主の義務化になったことは印象的でした。
しかし多くの企業がハラスメント対策に積極的に取り組んでいますが世間体を保つ程度の効果しか得られていません。
今後さらに被害が増えることが予想されます。
ハラスメント中でもいろいろと区別されているようです。
1.パワーハラスメント
パワーハラスメントとは職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること(労働施策総合推進法第30条の2第1項による定義)を指します。
※職場とは取引先・通勤時・忘年会なども含まれます。
それではパワハラの定義を見ていきましょう。
・優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること(優越的な関係とは多数派・新規採用・中途採用・技術面などの何らかの優位性の事)
・業務の適正な範囲を超えて行われること(適正な範囲の業務指示や指導がパワハラにはなりません。)
・身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
「厚生労働省資料(平成30年)「パワーハラスメントの定義について」(https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000366276.pdf). 」
と整理されています。
パワハラは基準が曖昧なところが難しい点です。
特に指導や叱責は相手次第にもなりますが、何よりも業務上必要かどうかが重要になります。(感情的な発言・暴言・自尊心への配慮・改善策の提示がポイント)
もちろん暴力は明らかなパワハラです。
2.セクシャルハラスメント
・男女雇用機会均等法では「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けること。(対価型)
・性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること」とされている。(環境型)
セクハラはパワハラのように曖昧な基準はありません。
主な基準をあげておきます。
- 職場においての下ネタ(仕事には不要)
- 不快感を与える言動(同性同士も含む)
- 相手に触れる行為(仕事に不要)
- 執拗な誘い(業務に関係ないご飯の誘いなど)
3.モラルハラスメント
・パワーハラスメントと似ていますが、違いがあります。
・モラルハラスメントは限定されていない。
・優越的な関係に関しては問題としていない為、夫婦間でも対象となる。
・一番の違いは精神的な暴力に限定されている点。
ハラスメントの種類としてはまだまだありますが、似通ったものも多くありますが、法律などで認められたものが増えていくようです。
ハラスメントは「嫌がらせ」と言い、広義的な意味では「人権侵害」です。
日本が法治国家だから法律さえ守れば何をしてもいいのでしょうか?
そのような心ではお互いに認め合い生活していくことは難しいことかもしれません。
しかし、人に嫌な思いをさせない気持ちを持って生きて行くことが全てです。。。
このように様々なハラスメントに名称がついていますが、重要なのは「パワハラ」と「セクハラ」です。
なぜなら他のハラスメントも「パワハラ」と「セクハラ」から派生して生まれたものだからです。
ハラスメントの公表と解決
ハラスメントの公表される数字は年々増加していますが、公表数字は実態の一部に過ぎないのです。
実際は被害者が公表されない方法で解決するケースが多く、辛い思いをしたまま泣き寝入りするパターンも多くあります。
公表されない方法では、内容証明が当該加害者に届き、個人での交渉となり、 裁判する前に解決することが多いのです。
ここで多くのひとが勘違いしていることの一つに「ハラスメントの被害は賠償金が低い」があります。
しかし公開しても非公開でも「しっかりと賠償金を取れる」と認識を改める必要があるでしょう。
実際、公表はもちろんですが、非公表の解決は加害者にメリットがあるので、より高額の賠償金を得る事ができる傾向があります。
なぜなら加害者は非公開にしてもらうことで、仕事を続けることができ、社会的にも家庭的にも円満に過ごす事が出来るからです。
ハラスメント問題の実態
ハラスメント問題を所属している企業に相談してもあまり効果は得られないケースが多いのが現状です。
なぜなら会社側から考えれば、業務面でも社会的な面においても都合が悪いからです。
少し厳しめに言うと弁護士に相談しても意味はありません。
弁護士は基本的に、被害者から出された証拠をもとに交渉するのが仕事だからです。
企業は癒着の相談室を構え、弁護士も頼りにならない。
この問題を解決するには、証拠を取るしかないのです。
日本企業の悪しき風習
日本はハラスメントを受けた人の数が、世界の中でも上位に入ります。
なぜ日本のハラスメントはなくならないのか、会社組織に注目して考えてみたいと思います。
入社から始まる洗脳教育
ある程度の会社組織になると入社後すぐに新人研修が始まります。
その期間は企業によってそれぞれですが、多くて3~5年、もしくはそれ以上の教育期間があり、職種によっては1か月ですぐに一人前扱いすることもあるようですが、この教育期間で多くの人は洗脳されるのです。
多くの上司・先輩方は入社してきた若者に対して、知らず知らずのうちに見下した態度をとっているのは間違いありません。
しかしそれは仕方のないことなのです。
なぜなら自分達もそのように教えられてきたから・・・
ベンチャー企業などにおいては能力主義がほとんどの為、早い段階でスキルが高ければ洗脳から逃れることが出来ます。しかし大手企業になるとやっかいで、特に工場などでは年功序列制度が導入されています。
例えばその人のスキルを考慮せず「あいつはまだ経験が足りないから」の理由だけで仕事を限定します。
こうすることで職場内の崩れる事ことがない上下関係が構築されます。
あなたの上司・先輩が人間的に個々を尊重することのできる人物なら幸せですが、そうではなかった場合には職場上の立場を利用した、パワーハラスメントの構図が出来上がるのです。
最近では多くの企業がハラスメント対策に乗り出しているので、多少は改善されていると思いますが、ハラスメントに苦しむ人がいることも事実です。
パワハラ社員を辞めさせない
社員を辞めさせた会社は世間から大きく非難されます。
そのため社員がハラスメントに苦しんで「会社を辞めたい」と会社側に相談しても、会社都合で退職をさせないために自己都合で退職する旨の書類を作ります。
精神的に追い込まれている社員への対応が保身なのですから、そのような会社は完全に世間体しか考えていないと言えます。
なぜこのような対応しかできないのか。
それは、パワハラ社員を辞めさせたくないのです。
なぜならパワハラを行う社員は多くの場合、職務上において重要な役割を担っていることが多いからです。
古い組織体系は変えられない
古い組織体系はは変わることができないのでしょうか。
結論、法律が変わらなければ今後もその組織が体系を変えることはないでしょう。
組織の構造自体を変えることのできる偉大な経営者が出てくれば話は別ですが、そんなことに期待しても何も変わりません。
苦しいときはすぐに会社を退職してください。
幸いなことに日本は働かずとも生きて行くことが出来ます。
十分に休息をとって、元気が出たら働き始めればいいのではないのでしょうか。
にわか仕込みのハラスメント対策
パワハラが、令和元年6月1日に事業主の義務化になりました。(パワハラ防止法)※正式名称 改正労働施策推進法
パワハラ防止法が施行された理由として2017年4月に厚生労働省が公表した「職場のパワハラに関する実態調査報告書」によると、相談窓口で最も多かったのが「パワハラ」だったという背景があります。
実際にどのように変わったのか、自分は法律を犯していないか、改めて理解する必要があると思います。
重要なものは以下の4点になります。
- 事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
- 苦情などに対する相談体制の整備
- 被害を受けた労働者へのケアや再発防止
- そのほか併せて講ずべき措置
これだけではよくわかりません。
厚生労働省が発表した資料を参考に要約しますので、しっかりと確認していきましょう。
1)事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
①パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し[管理監督者を含む労働者に周知・徹底させること]
(法律を守っていると認められる例)
・就業規則等でパワハラを行ってはならないと記載し、配布等すること。
・社内報等広報又は啓発のための資料等パワハラを行ってはならない旨の方針を記載し配布等すること。
・パワハラを行ってはならない方針について研修・講習を行うこと。
②パワハラに対して厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則等に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(法律を守っていると認められる例)
①就業規則等で定めた懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
② パワハラを行った者は就業規則などに定めた懲戒規定の適用対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること。
2)苦情などに対する相談体制の整備
①相談への対応のための相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
(相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例)
・相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
・ 相談に対応するための制度を設けること。
・外部の機関に相談への対応を委託すること。
②相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。被害を受けた労働者に十分配慮しながら対応すること。
(相談窓口の担当者が適切に対応することができるようにしていると認められる例)
・その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
・あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
・ 相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。
3)被害を受けた労働者へのケアや再発防止
①事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例)
・相談窓口の担当者等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。
また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実確認が不十分の場合、第三者からも事実を聴取する等の措置をとること。
・事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、法第30条の6に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。
②パワハラが生じた事実が確認できた場合には、速やかに被害を受けた労働者に対する配慮のための措置を行うこと。
(事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例)
・ 事案の内容や状況に応じ、配置転換や行為者の謝罪等の措置を行うこと。
・法第30条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。
③行為者に対する措置を適切に行うこと。
(措置を適正に行っていると認められる例)
・就業規則等に規定した必要な懲戒その他の措置を行うこと。あわせて、事案の内容や状況に応じ、配置転換や行為者の謝罪等の措置を行うこと。
・ 法第30条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して行うこと。
④再発防止に向けて措置を行うこと。
(再発防止に向けた措置を講じていると認められる例)
・ パワハラを行ってはならない旨を、社内報などに改めて掲載し、配布等すること。
・パワハラに対しての研修、講習等を改めて実施すること。
4)そのほか併せて講ずべき措置
①パワハラにおける相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を行い、その旨を労働者に対して周知すること。なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向等の個人情報も含まれること。
(プライバシーを保護するために必要な措置を行っていると認められる例)
・プライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、当該マニュアルに基づき対すること。
・プライバシーの保護のために必要な研修を行うこと。
・プライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報等に掲載し、配布等すること。
②法第30条の2第2項、第30条の5第2項、第30条の6第2項の規定を踏まえ、パワハラに関して相談をしたこと若しくは事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと等を理由として、不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
(不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者にその周知・啓発することについて措置を講じていると認められる例)
・ 就業規則等において、不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をすること。
・社内報等に不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等すること。
※文中に出てきた法律
・第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
・第三十条の五 都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
2 第三十条の二第二項の規定は、労働者が前項の援助を求めた場合について準用する。
第三十条の六 都道府県労働局長は、第三十条の四に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。
2 第三十条の二第二項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。
・第三十条の六 都道府県労働局長は、第三十条の四に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。
2 第三十条の二第二項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。
責任を取ってもらう
いくら法律が制定されても効力を発揮するにはまだまだ前例が足りません。
しかしパワハラで泣き寝入りしてしまった人は、統計上のデータよりも多く、残念ながら労働者として働く上で守ってくれるのは法律だけなのです。
対応方法や証拠など準備する必要がありますが、パワハラを受けている精神状態では「早く会社を辞めたい」気持ちが強く、冷静な対応ができません。
泣き寝入りせずにしっかりと裁判で慰謝料をもらうため、自分がその状況に立たされた時点ですみやかに対応できるようにしておきましょう。
1.何よりも証拠を集める
パワハラでの裁判は会社とパワハラを行った本人に対して行います。
・必要になってくる証拠
1.事実を証明する証拠(ボイスレコーダーでの録音やメモ書き)
※盗聴にはなりませんのでご安心ください。
2.パワハラが行われた期間が分かる証拠(期間が長ければ長いほど有利になります)
3.被害を証明する証拠(病院の診断書や不当な部署移動など)
これだけの準備が整えば次の段階に進めます。
2.本人・会社と交渉する
この段階では、自分が会社を続けていきたいのか、それとも会社を辞めたいのかで対応が変わってきます。
証拠を集めた段階で会社を辞めたい人がほとんどだと思うので、まずは証拠を持って会社の労働担当か所属する部署のトップと交渉してください。
ここで注意しないといけないのは、会社の人間は隠蔽しようとする人間が多いという事です。
考えてみれば当然です。
交渉相手はあくまでも会社側の人間ですから。。
辛い状況ではありますが、上手く丸め込まれないように注意してください。
気づいた時には自己都合での退職を進めてきます。
この段階で示談が成立しない場合は次に進みます。
3.弁護士に相談する
いよいよ弁護士に相談です。
もちろん費用も時間もかかるので覚悟はしなくてはいけません。
それでも諦めない事をおすすめします。
泣き寝入りして自分が今まで会社で積み上げてきたもの、会社に費やしてきた歳月が全てゼロになるのに、人に辛い思いをさせた本人は平気な顔をして会社を続ける。
私が知っている中にはパワハラで自殺まで追い込んだ人物が出向の形で協力会社の所長になった人間がいます。
おかしな話ですね。
泣き寝入りした過去は時間が経つにつれて傷が深まります。
しっかりと現在、そして未来を考えた上で自分にとって最適な方法をとり、幸せな人生を歩んでほしいと思います。
パワハラの適切な対応についての詳細はこちらの記事も参考にしてみてください。