中国古典の一つ、易経の「乾為天」は前回紹介しました。
易経の読み方なども解説しているので、初めての方はまずは以下の記事から読んでいただけると理解しやすいかと思います。
しかし易経の中には「乾為天」以外にも人生に役立つ教えが多く含まれています。
その中でも「辛い状況でも頑張りたい」「これから仲間と大きな目標に向かっていきたい」と思っている人へ「天火同人」と「沢火革」を紹介したいと思います。
「天火同人」
人に同じうするに野においてす。亨る。大川を渉るに利ろし。君子の貞に利ろし。
彖に曰く、同人は、柔、位を得、中を得て、乾に応ずるを同人と曰う。同人に曰く、人に同じうするに野においてす、亨る、大川を渉るに利ろしとは、乾の行なり。文明にしてもって健、中正にして応ず、君子の正なり。ただ君子のみ能く天下の志を通ずることを為す。象に曰く、天と火とは同人なり。君子もって族を類し物を弁ず。
公平な立場に立ち、人に接することで大きな目標を成し遂げる事ができる。協力しなければならない時は同じ志をもつ仲間と、それぞれの役割をもって事に当たること。
「天火同人」は社会に役立つ大きな目標を達成する方法を教えてくれます。
初九。人に同じうするに門においてす。咎なし。
象に曰く、門をい出て人に同じうす、また誰か咎めん。
六二。人に同じうするに宗においてす。吝なり。
象に曰く、人に同じうするに宗においてするは、吝道なり。
九三。戎を莽に伏せ、その高陵に升る。三歳まで興らず。
象に曰く、戎を莽に伏すとは、敵剛なればなり。三歳まで興らず、いずくんぞ行かん。
九四。その{土|庸}に乗るも、攻むるに克わず。吉なり。
象に曰く、その{土|庸}に乗るも、義として克わざるなり。その吉なるは、困しみて則に反ればなり。
九五。人に同じうするに、先には号き{口|兆}び後には笑う。大師克ちて相い遇う。
象に曰く、同人の先とは、中直なるをもってなり。大師相い遇うとは、相い克つを言うなり。
上九。人に同じうするに郊においてす。悔なし。
象に曰く、人に同じうするに郊においてすとは、志いまだ得ざるなり。
「二人心を同じくすれば、その利きこと金を断つ。同心の言は、その臭り蘭のごとし」(繋辞伝)
光明明白な志の同じ仲間と協力し、和をもって行動を共にする事で目標を達成する事が出来る。
さらに「社会にとって意味のあること」という点が「天下同人」では重要視されています。
「沢火革」
革(かく)は、已日(いじつ)にしてすなわち孚(まこと)とせらる。元(おお)いに亨(とお)り貞しきに利(よ)ろし。悔(くい)亡ぶ。
彖(たん)に曰く、革(かく)は、水火相い息(そく)し、二女(じょ)同居してその志(こころざし)相い得ざるを革(かく)と曰う。已日(いじつ)にしてすなわち孚(まこと)とせらるとは、革(あらた)めてこれを信ずるなり。文明にして以(もっ)て説び、大いに亨(とお)りてもって正し。革(あらた)めて当たれば、その悔いすなわち亡ぶ。天地革(あらた)って四時(しいじ)成り、湯武(とうぶ)命(めい)を革(あらた)めて、天に順(したが)い人に応ず。革(かく)の時(とき)大いなるかな。
改革は民のために必要であると感じた時に、時をよく見計って行うこと。
その行動が正義によって行われたならば改革に伴う問題は避けられる。
初九(しょきゅう)。鞏(かた)むるに黄牛(こうぎゅう)の革(かわ)を用う。
象に曰く、鞏(かた)むるに黄牛(こうぎゅう)の革(かわ)を用うとは、もって為すあるべからざるなり。
六二(りくじ)。已日(いじつ)にしてすなわちこれを革(あらた)む。征(ゆ)けば吉(きつ)にして咎なし。
象に曰く、已日(いじつ)にしてこれを革(あらた)むとは、行きて嘉(よ)きことあるなり。
九三(きゅうさん)。征(ゆ)けば凶なり。貞(ただ)しけれども(厂/萬(あやう)し。革言(かくげん)三たび就(な)れば、孚(まこと)あり。
象に曰く、革言(かくげん)三たび就(な)れば、また何(いづ)くにか之(ゆ)かん。
九四(きゅうし)。悔(くい)亡ぶ。孚(まこと)ありて命(めい)を改めれば、吉(きつ)なり。
象に曰く、命(めい)を改むるの吉(きつ)とは、志を信ずればなり。
九五(きゅうご)。大人(たいじん)虎変(こへん)す。いまだ占わずして孚(まこと)あり。
象に曰く、大人(たいじん)虎変(こへん)すとは、その文炳(へい)たるなり。
上六(じょうりく)。君子豹変(ひょうへん)す。小人は面(めん)を革(あらた)む。征(ゆ)けば凶なり。居(お)れば貞(ただ)しくして吉(きつ)なり。
象に曰く、君子豹変(ひょうへん)すとは、その文蔚(ぶんうつ)たるなり。小人は面(めん)を革(あらた)むとは、順(じゅん)にしてもって君に従うなり。
※「黄」は中庸の意、「牛」は従順の意
最後に「小人は面を革む」とありますが、これは改革を成し遂げたあとに、今まで批判してきた人物を攻めてはいけないという意味です。
世間から叩かれても、それが本当に国民への思いから出た改革ならば、いずれは批判していた人たちも賛同してくれるはずです。
まとめ
易経の卦にはもっと深い意味もあり、並び順で人間関係や今の行動が適しているか等もわかります。
そこまで詳しくなくとも人生の方向性や生き方がわからないと言った私達に、歩むべき道を示してくれてます。
近年では誰もが出版し、価値のない書籍が溢れかえっています。
そんな内容のない本を読むよりは、易経の一文を読むほうが人生にとって、はるかに有益であると感じます。
特に竹村亞希さんの本は、易経を読んだことのない人でも理解しやすいのでお勧めです。
参考文献
「易経(上・下)」高田真治・後藤基巳訳
「超訳 易経 陽 ー乾為天ー」竹村亞希
「超訳 易経 陰 ー坤為地ほかー」竹村亞希
「東洋倫理概論 いかに生くべきか」安岡正篤