諜報活動にはOSINT調査や、聞き込みなどのHUMINTなどがあります。
それだけ平和であるとも言えますが、日本にも私達を守る諜報機関は存在します。
それは「公安調査庁」です。
公安は主に組織的な犯罪や右翼テロなどの国民の安全を守るために活動する事が多く、公開情報の調査(OSINT)などを行っていますが、あまり政治やビジネスの世界には登場することはありません。
しかし海外ではCIAやKGBを筆頭に数多くの諜報機関が活躍しています。
むしろ政治やビジネスの世界では諜報活動なしには成功できないと言っても過言ではありません。
今回は諜報活動の基礎について解説していきたいと思います。
諜報活動の種類
諜報活動には様々な種類がありますが基本的には
- HUMINT(ヒューミント)人から得られる情報による諜報活動
- SIGINT(シギント)無線などの信号による諜報活動
- GEOINT(ジオイント)地理空間、画像などの情報についての諜報活動
- MASINT(マシント)各計測手段(科学物質や放射能の分析)による情報についての諜報活動
- OSINT(オシント)公開情報についての諜報活動
などが挙げられます。
これらの諜報活動は軍隊で使用されていたものが、常用化して一般社会に降りてきた経緯があります。
近年ではSNSの発展によってOSINT(オシント)が注目されましたが、実際に諜報機関では「使える情報の90%はオープンソースの公開情報」とされており、日本でも注目されつつあります。
イギリスの非営利調査報道機関で有名な「べリングキャット」が、ロシアの工作員を暴いた記事は世界を驚かせました。
この他にも諜報機関は様々な技術を用いて任務を遂行します。
少しだけ紹介します。
フォールス・フラッグルート
誰かに秘密情報を提供させるには提供しようとする動機となるものを見つけます。
同期になるものにはお金・女・愛国心など様々なものが対象となりますが、それは個人によって違います。
その動機になるものを確定し対象者が動機を実行したいと思う状況を作り出します。
これがフォールス・フラッグルートと言う手法です。
トラッシング(ゴミ漁り)
ゴミの中にはその人の生活や個人情報など多くの情報が記されています。
企業などにおいては 請求書や封筒のゴミ、 使えなくなった SD カードなど企業の内部情報が記録されているものがゴミの中には紛れている可能性があります。
そのような些細な情報から、本来秘密とするべき情報が漏れてしまうのです。
トラッシングはソーシャルエンジニアリングとも呼ばれ、ハッキングのために使用されることが多く、非常に危険のため、ゴミを捨てる際には十分な注意が必要です。
※ソーシャルエンジニアリングはネットワークに侵入するために必要となるパスワードなどの重要な情報を、インターネットなどの情報通信技術を使わずに入手する方法を指します。
CIA流 嘘を見抜く技術
私たちは、はぐらかしたい表現をする時に「修飾表現」を用いた言動 を知らず知らずのうちに使っています。
これを「 ディトゥール・ステートメント」(迂回声明)と呼びます 。
このような状況では「自信の欠如」「注意すべき懸念事項」「情報提供の回避」 が言動に現れており、これは心理学用語でいう「認知的不協和」にあたります。
上記の言動・行動、つまり「嘘」をついてる人間の様子には以下のような特長があります。
- 「おそらく」「見通しです」「基本的に」のような修飾表現を使った言動
- 体の重心を移動させる、髪に触れるなどの身体的行動
- 質問に逆上するなどの感情の変化
逆に「ダイレクトな回答」「自発的な回答」「一貫性のある行動」などの言動・行動が見られた時は「真実」の可能性が高くなります。
諜報業界ではこのような小さな情報をかき集め、その情報の価値を見極め、予測する能力が求められます。
情報機関に必要な能力
情報機関は主に「作業員」「分析家」「援助班員」と呼ばれる大きく三つに分けたグループから構成されます。
そして情報収集には「調査員」「内通者」などの適した人材を配置し行います。
日本の探偵が行うような調査は基本的に、調査員が対象者の偵察を行い、依頼主に適切な報告を行う事が主な仕事になります。
幅広い能力が求められる情報機関のメンバーに必要な能力としては
- 人間を見る力があること
- 困難な条件の下で他人と協力して働くことができること
- 事実と虚構を見分けることを学ぶこと
- 大切なことと大切でないことを区別できること
- 探究心を持つこと
- 大きな工夫力を持つこと
- 微細なことにも適度な注意を払うこと
- 考えを明晰に簡潔に、そして大切なことは面白く表現できること
- 沈黙すべき時は口を閉ざすこと
- 他人の考え方、見方、行動などに対して寛容な心を持つこと
- 名誉、財産などとは違う志を持つこと
と元CIA長官のアラン・ダレスは回顧録で述べています。
アメリカの私立探偵の祖 アラン・ピンカートン
諜報機関は近年ではCIAを引退した人が、諜報企業として活躍する事もありますが、それなりに歴史があります。
古くは労働組合を潰すことに加担したり、現代では企業の利益を守るためにライバルの製品を抑え込む活動を行うこともあります。
しかしこのような活動は本来の調査員が行うべき活動ではないのです。
アメリカの私立探偵の始まりとされているアラン・ピンカートンはその活動に具体的なルールを設けていました。ピンカートン探偵局は又は検察官の知らないところで刑事罰の被告の代理人になってはならない。また裁判の陪審や役人の仕事ぶりについて調査はしない。合法的な活動を続ける労働組合のメンバーについても調べない。敵対する政党間の一方の側に雇われてはならない。組合の集会はそれが一般に公開されたものでない限りその模様を報告してはならない。成功報酬や感謝の印、その他の謝礼を受け取ってはならない。ピンカートン探偵局は犯罪と無関係な女性の手口について一切調査することがない。離婚やスキャンダルも一切扱わない。「諜報ビジネス最前線」エイモン・ジャヴァーズ著
このように私達が想像する諜報機関のイメージとはかけ離れているように感じます。
さらにピンカートンの時代の探偵の活動範囲は広く、現代の検察のような仕事も行っていました。
犯罪者というものは最終的に自分の秘密を開示しなければならない存在である。そして探偵たるもの犯罪者がもっとも心を弱らせた瞬間をつかみ、共感と確信をもって犯罪者に、彼の心を苛んでいた秘密を明らかにするよう迫るだけの経験と人間性への判断力を持たねばならない。「諜報ビジネス最前線」エイモン・ジャヴァーズ著
諜報機関が狂わす政治とビジネス
情報社会となった今にこそ各国の諜報員は暗躍します。
政治ではプロパガンダから始まり、世論を自分たちの思い通りに操作したり、ありとあらゆる手段を用いて私達を錯乱します。
近年では新聞やメディアではなく、SNSによる情報操作に力を入れているようです。
ビジネスの世界では上述した通り、他社の製品の評価を下げたり、インサイダー取引などにも精通しています。
これを「企業スパイ」や「産業スパイ」と言ったりもします。
諜報活動の多くは犯罪、もしくはグレーゾーンの行動が多いため、社会のルールに従って活用するのは良いですが、一般人はあまり踏み込まないほうが良い領域かもしれません。
まとめ
日本は情報に弱い国とされています。
SNSでは毎日のように様々な憶測、主張が飛び交い、何が真実なのかわかりません。
その不確かな情報をもとに、他人をたたいたり、大衆を煽ったりすること自体が、他国のスパイに操られていることに気付くべきです。
そうならないために私たちができる事は、しっかりと情報を見極める能力を身に着けることだけです。
参考文献
「諜報の技術 CIA長官回顧録」 著 アレン・ダレス 訳 鹿島 守之助
「諜報ビジネス最前線」著 エイモン・ジャヴァーズ 訳 大沼 安史