調査スキルの向上のために、今回は購買行動についての理解を深めていきたいと思います。
あなたは無意識のうちに商品・サービスを購入させられていることに気づいていますか?
「そんなことはない、自分の意志で購入しているんだ」と思うはずです。
確かにその通りかもしれませんが、自分の購買行動と照らし合わせて、自分の意志とズレがないか確認してください。
1.購買意思決定プロセスとは
購買意思決定プロセスとはとは、消費者が商品・サービスを購入したいと想起してから、意思決定し、実際に購入するまでの購買行動の事です。
一般的な購買プロセスは以下の通りです。
営利企業の多くは、この購買にいたるまでのプロセスの中で、いかにして消費者の意識を商品・サービスに向けさせるかを考えています。
つまり、価値のない商品・サービスは過剰広告やインフルエンサーなどを使って印象操作にしなければ売れない程に、現代のマーケティングは過酷とも言えます。
しかし、消費者は価値のない商品を買わない・買わされない為に警戒するべきです。
今回は購買行動について理解し、普段の購買構動の改善に役立ててください。
1-1.問題認識
問題認識とは、自分が抱えている問題を認識する事。
自分の生活を良くしたいなどの欲求を満たしたい感情、つまり、自分の中での不満を解決することでもあります。
問題認識から購買行動を起こすパターンは、「使用している製品に不具合がある」「この製品があれば生活が良くなる」などが当てはまります。
1-2.情報探索
情報探索とは、すでに抱えている問題が明確な状態から始まります。
情報探索にはレベルがあり、関心の高さなどによって異なり、一般的には「価格」「購買頻度」「社会的評価」が高いと商品・サービスに対する消費者の関心が高くなると言われている。
例えば、
- 「価格」が高ければ、購入時の判断ミスで大きな損失が出る
- 「購買頻度」が高ければ、類似商品でより良いモノがあるかもしれない
- 「社会的評価」が高ければ、周囲の評価があがる。
ここで、一番注意してほしいのは、「社会的評価」です。
これはブランド品や環境対策商品などで、「このブランドを付けていれば、周りからの評価があがる」「環境に対して私は意識が高いと周りから思われる」といった承認欲求から購買意欲が増幅しているだけで、その商品自体の価値は高くありません。
要するに搾取されているだけです。
1-3.代替品の評価
代替品の評価は、類似製品と比べる事です。
- 価格
- 機能
- 性能
- レビュー
など、比べる基準は人それぞれです。
1-4.購買決定
購買を決定する段階です。
この時点で「購入する事」自体は決定しています。
1-5.購入後の評価
商品・サービスを購入したことで、自分は満足できたのか、自分にどれだけのベネフィットを与えてくれたかを評価する段階です。
1-6.注意点
現代ではインターネットの普及によって、意思決定プロセスが機能しない場合もあります。
インフルエンサーが紹介した商品を、流れのままに購入してしまうなどは良い例でしょう。
そこには、心理的な反応が強く表れていますが、いわゆる衝動買いに近い購買行動です。
よく「衝動買い」という言葉で自分を納得させる人がいますが、それは単なる「損失」である事を忘れないでください。
ここからは、「損失」を回避するために購買行動の種類について見ていきます。
2・計画購買と非計画購買
購買行動には「計画購買」と「非計画購買」の二種類あるが、違いは購買行動が「計画的」であるかの一点だけです。
計画購買は、購入前に意思決定した商品と購入後に買った商品に違いがない場合です。
非計画購買こそが重要なのでしっかりと見ていきましょう。
非計画購買
非計画購買には様々な種類があります。
- 純粋衝動購買
- 想起衝動購買
- 提案受入衝動購買
- 計画的衝動購買
ひとつずつ確認しましょう。
純粋衝動購買
これが日常で一番起こる回数が多いかもしれません。
晩飯の食材を買いに行っただけなのに、ついでにおやつを買ったりしてしまうパターンです。
想起衝動購買
日常の買い物を想像してください。
今日の晩飯はカレーにしようと買い出しに出かけたところ、卵が目に入った。「そういえば、あと二つしかなかったから買っておこう」というパターンが想起衝動購買にあたります。
提案受入衝動購買
これは悪く言うと押し売りです。
買うつもりのない商品を店員の話に丸め込まれて購入してしまうパターンです。
計画的衝動購買
これは元々買う商品が決まっている時に起こる事が多いです。
商品自体は決めているけど、機能やブランド、食材であれば産地や大きさなどで、「見てから決めよう」という発想が計画的衝動購買にあたります。
非計画購買における研究
非購買行動における研究結果を神戸大学 経済経営研究所の加藤 諒がわかりやすくまとめているので、目を通しておきましょう。
Wood (1998)や Inman et al. (2009)は性差の非計画購買に与える影響を検証しています。Wood(1998)は、女性の方が買い物に時間をかけること、買い物をより楽しいと感じていること、広告の値段を比較すること、クーポンを購入することなどを挙げ、女性の方が非計画購買をする確率が高いことを指摘しています。またInman et al. (2009)は、女性は主婦(housewife)として男性よりも購買の機会が多く、店頭で家庭内在庫の少なさなどによる製品購買の必要性に気づきやすいため、女性の方が男性よりも非計画購買を行う確率が高いと考え、実データからその傾向を実証しています。また、年齢に関してもいくつかの研究が行われています。Wood(1998)は、年齢と delay ofgratification(将来のより大きな報酬のために目先の欲求を抑える能力)には負の相関があるため、年齢と衝動購買には関係性があることを示唆しており、実際に若者の方が年長者よりも非計画購買を行う傾向があることを、実データを用いた回帰分析によって示しています。また Chandon et al.(2009)は、アイトラッキング(視線計測)の手法を使って、年長者の方が考慮するブランド数が少ないことを示し、非計画購買が起こりにくいことを示唆しています。その他にも、買い物に行く回数が少ない人の方が非計画購買をしやすい、大人数世帯の購買者の方が非計画購買をしやすい(Inman et al., 2009)、買い物リストを持っていない人の方が非計画購買をしやすい(Hui et al.,2013)、ことなどが知られています。製品属性に関しては、陳列棚に置かれている製品(Hui et al., 2013)、アイスクリームやケーキなどのhedonicな(快楽性の高い)製品カテゴリー、購買間隔の長い製品(Inman et al., 2009)では非計画購買が起こりやすいことが指摘されています。環境要因に関しては、店舗での滞在時間が長い方が非計画購買が起こりやすい、現金よりもクレジット払いの消費者の方が非計画購買が起こりやすい(Inman et al., 2009)、車やタクシーで来店した方が非計画購買が起こりやすい、値段が安い・特売を行っているという理由で選んだ店舗の方が非計画購買が起こりやすい(Bell et al., 2011)、といった直感的にも理解しやすい結果が実データから得られています。ビデオカメラを使った Hui et al. (2013)の研究では、直前に買い物かごに入れた製品が非計画であった場合、次にかごに入れる製品は購買を計画していた製品になる確率が高いといったことも明らかにされています。(RIEB ニュースレターNo.196 2019 年 3 月号より)
一言でまとめると、
「特売をやっているお店に車で行く、買い物リストを持っていない、買い物に時間をかける、支払いはクレジット払いの女性は、衝動買いに特に気を付けること」です。
さいごに
購買行動は生きていく上で必要な事であり、私たちの生活をより良くしてくれることでもありますが、非計画購買のような購買活動は営利企業にとっては「おいしいカモ」とも言えます。
私たちは不買運動をしたいわけではなありません。
必要なモノ、生活を豊かにしてくれるモノは、どんどん消費するべきです。
その反面、必要でない商品・サービスは市場から追い出すことも必要であると考えています。
なぜなら、その消費をより良い消費に回す事ができれば、回りまわって社会全体が豊かになることに繋がるからです。
正しい選択、正しい消費を心掛けてください。
搾取されないためにも、生活をよりよくするためにも適切な消費を心掛けるべきです。